“内緒のxxx”
       *ちょいと絡みがなくもないので、どか御用心のほどvv
 

 
暑苦しくもなく、さりとて冷え過ぎてもいない。
絶妙な空調の中、気怠い吐息、一つほど零して。

 “…。”

いつの間にやら寝入っていたらしいと、
それと気づくのと同時、
誰かの懐ろにいることへも気がついて。
緩むにも限度があろうよと、ついついハッとしたものの、

 「…。」

どこか華やかで甘やかな、柔らかな匂いに、
ああ、あいつかと、苦笑い。
警戒心が先に立ったのを、知れたらまた拗ねられるなと、
そう思ったのともう一つ。

 “いい加減、覚えろってんだよな。”

これはこっそり、自分への辟易。
無防備でいること、自分から許した唯一の相手なのにね。
こんなシチュエーションも、もうどれほどとなることか。
安堵しきっての寝起きになっていいはずなのに、
警戒から、ついつい肩へと力が入るのが、自分で一番遣る瀬ない。

 「…。」

腕へと力を込めての身を起こし、そのまま真下を見下ろせば、
そこには直前まで同じ温みを分け合っていた相手の寝顔。
不意に身を剥がしたこちらの温みを追うようにして、
覚束無くも腕が伸ばされて来るのへと、

 “相変わらず信用ねぇのな”

信用…というのは ちと違うかなと、再びの苦笑が洩れた。

 「…。」

何から何まで、自分とは対象的な相手だ。
うっすらと陽に灼けて、
いかにも夏の名残りをまとったままな肌は見るからになめらかで。
そこに刻まれた陰影は、
雄々しいまでに鍛え抜かれた身であることの証し。
肩や二の腕、胸板には、頼もしい筋骨が健やかに盛り上がり、
みぞおちから腹にかけてはきれいに割れている見栄えが、
長身精悍な彼にはいかにも相応しく。
誰からも好かれるだろう、ソフトな笑みの似合う端正な面差しは、
それでもこのところ、ずんと男臭さを添わせて来たみたいで。
印象的な目許が今は伏せられているのが、ちと面白くなくて、

 「…。」

すいと身を下げてののしかかり、
浅い緋色の口元へ、こちらからの口づけ、落としてやれば。

 「…ん。」

少しは目覚めかけていたのだろう。
ん〜?なんてな途惚けた声を上げたのもつかの間、
何か言うつもりだったか、薄く開きかけた口元が、だが、
素早く状況を拾ってか、

 「…。」

小さく微笑ってのそれから、
ついばむみたいに吸いついて来やがったのが妙に可笑しい。

 “こら。起きてんだろーがよ”

腕も背中へ回ってるしな。
だったら遠慮なんて要るものかと、
厚めの胸板へ身を預け切ってののしかかり、
薄く開いてると エロかわいいとか
女どもがほざいてやがった唇へ、こっちからも食らいつく。
どんなに押しつけても頼りないのは、お互いに柔らかな場所だから。
物足りなくて、だから、もっと。
手ごたえがほしくってムキになる。
もっともっと深くと、むさぼるように求め合い、
舌先とがらせて、隙間へと割り入れば。
触れた歯列がすいと逃げて抵抗なく開くから、

 “こいつめ…。”

押せ押せで来たのはそっちでしょと、したり顔するのが今から判る。
気がつけば背中から腰から しっかと抱きすくめられてての、
体ごと搦め捕られたそのままに、
それぞれの別物だった舌先が触れ合って。
ざらりとした違和感は一瞬だけ、
まるで元から一つだったかのように、
すぐにも溶け合い、くっつき合って。

 “あ、やば…。”

体が熱くなって来た。
目が覚めりゃそれで良かっただけなのにな。
肌がうっすら火照って来てる。
それはちょっと、想定外。
そんな慄きが伝わったのか、

 「…ん。」

さすが付き合いの長さの賜物か。
良くできた情人は、聞き分けがよくて諦めもよくて。
案外とあっさり手を放してくれるのが、

 「…。」

助かったはずなのにね、なんでだろ。
ちょっとだけ、そう、少しだけ

 “…むかつく。”

なんて勝手かと、自分でも思うけど。
そうそう理性でばかり人は動いちゃいねぇからなと。
こちらも解放された舌先、
引き取るついでに…ちょこっと悪戯。

 「ん…。」
 「…。」
 「…んん。」

歯列の、特に前歯の並び、
わざとに舌先でちろちろと撫ぞってやれば、

 「…こら。それってわざとだろ、蛭魔。」
 「さてな。」

ぐいと押しやられた先、
見様によっては“高い高い”状態にされたままで、
にやにや笑う悪魔様だったりし。

 「懐かしいよな、これ。
  関東大会で欠けたんだったよな。」

下唇へくいと当てた指先の下に現れるわ、
ホワイトパールのきれいな歯並びだけれど。
下の前歯の真ん中、
アップにならなきゃ判りにくいが、
こうまで間近では隠しようもない窪みがあって。
そこのざらりとした引っ掛かり、
本人以外では自分しか知りようがないものであるのが…妙に嬉しくて。
キスするとつい、舌先で撫でるのがいつの間にやら習いになっていたりして。

 ―― パテとかで埋めねぇの?
     シーズンオフになったらね。
     アップんなったら誤魔化せないだろに。
     仕方ないよ、下手に埋めてもすぐ取れちゃうし。

まあ、今時は写真や映像の加工の技術も進んでるからな。
あ、失礼しちゃうな。
何だよ。
僕の写真や映像ってのは、一切加工されてないのも売りなんだよ。
ほほぉ。
嘘だと思うなら調べてみなよ。
どうやって…と、訊いた途端に。
腕を引かれて、頼もしい胸元へ軟着陸していた蛭魔であり。

 「見比べるのなんて簡単でしょ?
  ホンモノの僕んこと、一番間近でよく見て知ってる妖一なんだからサ。」
 「〜〜〜っ! /////////」

あ、赤くなった。か〜わい〜いvv
こんのファッキン馬鹿野郎っ! 耳元でややこしい声を出すんじゃねぇっ!
わっ、機関銃は反則だってば。リボルバーまでって約束したでしょ?
うるせぇっ!!


  ………と、まあ。
  お熱いのだか、喧しいのだか、
  相変わらずのこちらさんであるようでございますvv







  〜どさくさ・どっとはらい〜  07.9.10.


  *本誌をお読みの方には今更なネタですいません。
   先日手に入れた最新刊コミックスを読んで、
   わおvvと萌えたのが、ラバくんが前歯欠けるほど頑張ったところ。
   頭を丸坊主にしたり、無精髭生やしたり、
   色んな意味から成長著しくて。
   この子もほんっとに目が離せないキャラで、
   そしての今回がこれですものね。
   これは是非とも、蛭魔さんにだけ、悪戯してほしいと思いましてvv
   はい、一番のバカヤロはわたしですvv
(爆笑)

めるふぉvv めるふぉ 置きましたvv *

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